2021.11.28GOALZ

海外が“県外”になった

 元会社経営者のN様が「teon垂水(訪問リハビリ)」をご利用されて早三年。当初から姫路市にある別荘のことを頻繁にお話されていました。
 家族や同僚と楽しい時間を過ごすために購入された別荘は、大切に手入れや管理を行ってきたそうです。しかし、神戸市垂水区のサービス付き高齢者向け住宅に入所されてからは、一人で外出することは難しく、別荘に行くことも簡単ではなくなってしまいました。更にコロナ禍になってからは、別荘どころかご家族との食事会も開催できず、ほとんど楽しみがない――という状況が続きました。
 そこで緊急事態宣言が解除されたことをきっかけに、私たちから別荘へ出かけることをお伝えしてみました。

 はじめは「もう少し落ち着いてから……」と腰が引けておられましたが、少し強引に日帰りのBBQをご提案。感染対策を含むリスク管理も必要ですので、看護師・担当セラピストの計3名の同行で実施することにしました。
 そこからは計画がとんとん拍子に進み、次第にN様からも「BBQでは、やわらかい牛肉が食べたい。ビールも飲みたい。ラガーがいいな。」とその日を楽しみにされている言葉が出るようになってきました。

 そして当日――天候にも恵まれBBQを開催。そこには希望されたとおりの美味しい肉や野菜、ビールが並び、いつもとは違う笑顔(私たちも含め!)に溢れ、楽しい会話とともに時間が流れました。

 「GOALZ」を経験されて、改めてN様に今の心情をお聞きしました。
 当初、N様にとって別荘に行くことは海外旅行と同等のハードルの高さを感じておられたそうです。それに加え、感染症の心配や家族の負担を考えると、今後の人生で別荘に行くことはないだろうと諦めておられたと……。しかし、私たちの強引な誘いに可能性を感じ、重い腰をあげて下さったようです。

――「おかげで、海外が県外になったわ」

 ポロッとこぼされた一言を聞いて「諦めていたことが、実は手が届くことだった」と気付いてくださったように私たちは感じました。
 多くの方々は、やりたいことを諦めてしまい、言葉にも出さずにおられます。その方々の「やりたいこと」を引き出すこと、そして、人生に後悔が残らないよう背中を押し続けて差し上げることが、私たちの任務だということを心から感じました。